アマデウス覚書、またの名を虫食いクイズ①
アマデウスを観劇し、どうにか思い出せるように形に残しておきたかったゆえの覚えてる範疇の文字起こし、ないしストーリーの概容になります。
私の記憶の抽出のため、間違っているところが多分にあると思うので、ご指摘いただければうれしいです。話半分に見てください。
ところどころ聞き取れなかった言葉(主にイタリア語、ドイツ語や、音楽用語等)が虫食い状態で表記されているため、お心あたりのある方は教えていただけると嬉しいです。
冒頭~サリエーリ、モーツァルトはじめての顔合わせまで。
1823年、晩秋のウィーン
噂をする町の人々。さざ波のようにどこからともなくサリエーリの名を呼ぶ声が響く。
ウィーンの街を騒がせる一大スキャンダル。サリエーリがモーツァルトを暗殺したとの噂。しかもその噂の出処は、サリエーリ自身による罪の告白だという。しかし一体、何故32年も前のモーツァルトの死をサリエーリが告白したのか?人々はその真相を確かめるべく、サリエーリの召使を問い詰める。
男たち「吐け」「吐け!」「お前の主人は何を言っている?」「お前の主人は夜毎何を叫んでいる?」「さぁ言え!」「言うのだ!」
あたりに響き渡るサリエーリの叫び声。
男たち「モーツァルト、すまなかった」「許してくれ、君を暗殺したことを」
街の人々「暗殺!」「暗殺!」
ざわめく街の人々。舞台場真ん中に位置する人影にスポットライトが当たる。それは車椅子に乗った年老いたサリエーリである。
召使いに明日6時に来るよう申付けるサリエーリ。驚き慌てふためく召使達を見て、「明日の朝にはもっと驚くことになるぞ」とにやりと笑うサリエーリ。
観客席に向かって語りかけるサリエーリ。観客を「亡霊たち」と呼び、姿を見せるように乞う。亡霊を呼び出すため、ピアノを弾き歌うサリエーリ。電気が明るくなり、客席が浮かび上がる。(=亡霊が姿を見せる)
姿を見せた亡霊たちに向かって、サリエーリは語る。彼がいかにしてウィーンで最も成功した若き音楽家になったかを。
平凡なる田舎町の、商人の家に生まれたサリエーリ。商売繁盛を祈る両親と違い、彼が神に望んだのは音楽家としての名声だった。幼き日のサリエーリは神に契約を求める。「神を讃えること、生涯私利私欲ではなく、人のために仕え、清廉に生きることと引き換えに、音楽家としての名声を与えよ」と。
その望みは叶えられ、それからすぐにサリエーリはウィーンにいる親戚のもとへと引き取られ、音楽の道へと進むことになる。そして皇帝の覚えもめでたく、サリエーリはウィーンで宮廷音楽家として確固たる地位を築いた。
「そしてわしがウィーンへ来たのと同じ頃、ヨーロッパ各国を演奏旅行し、12歳にしてその名を轟かせた男がいた。彼の名は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト!」
「アントニオ・サリエーリ最後の大舞台。題して、『モーツァルトの死、そしてわしが本当にそれをやったのか』」
「時は1781年、ウィーン!」
舞台は過去のウィーンへ、サリエーリが纏っていたマントを脱ぎ捨てると、溌剌とした若き青年時代のサリエーリへと変貌する。
宮廷や人々の紹介。根っからの宮廷人であるヨハン・シュトラック侍従長。大のイタリア贔屓のフランツ・ローゼンベルク伯爵。堅物でフリーメーソンの熱心な信奉者である、ファン・スヴィーテン男爵。
宮廷楽長を務めるボンノ、サリエーリの妻であるテレサ、サリエーリの弟子であり、サリエーリ意中の女性である、ソプラノ歌手のカテリーナ・カヴァリエリ。
彼らを含めた人々の活躍を後の世に伝えるのは、音楽にほかならないとサリエーリは語る。当時の音楽家は確かに召使、ただし、教養ある召使であったと。しかしながら、誰が誰に本当は仕えているのか?皮肉っぽく語るサリエーリ。
場面は変わって、モーツァルトが来るとざわめく宮廷。
「彼のオペラ、『クレタ王イドメネオ』を聞いたが素晴らしかった。真面目でいい作品だ」と語る男爵。
「よく出来てはいたが、あの若造、レオポルド・モーツァルトの息子、背伸びをしている。音符が多すぎる」と語る伯爵。
「陛下より、モーツァルトにオペラを委嘱せよ。ドイツ語のオペラだ」と、侍従長より皇帝の命が伯爵へと申し伝えられる。
伯爵「ドイツ語のオペラ?なぜです、オペラと言えばイタリア語でしょう」
侍従長「陛下は平易な母国語によるオペラをお望みだ。これは命令である」
伯爵「なんにせよ、あの若造とはいずれ厄介なことになりそうですな。天才というのは得てして面倒なものだ」
サリエーリ「父親はレオポルド・モーツァルト。ザルツブルクの大司教に仕える、ヤマっけのある音楽家だとか。しかしながら、神童も二十歳すぎればなんとやらとも言いますな」
笑いあう伯爵とサリエーリ。二人のイタリア語での会話に憤慨し、去ってゆく侍従長。伯爵も場を去り、続いて去ろうとした男爵が去り際にサリエーリに話しかける。
男爵「先日は年老いた音楽家の年金を決める委員会に出席してくれてありがとう。君は素晴らしい人物だ、アントニオ。ぜひフリーメーソンに入会してほしい。要望があれば、私の支部に登録するよう口添えもしよう」
サリエーリ「身に余る光栄です、閣下」
男爵「よせ。もしかしたら、若いモーツァルトにも声をかけるかもしれん。まぁ、あの男の人柄次第だがな」
当時の有力者たちはほとんどがフリーメーソンに所属していた。さらに、男爵の支部は中でも華やかだと喜ぶサリエーリ。
サリエーリ「しかし、若いモーツァルトについては正直に言って警戒心を抱いた、奴はあまりに評判がよすぎる」
風(サリエーリの使いで街で色々な噂を集めてくる男ふたり)を呼ぶサリエーリ。
風「5歳で作曲をはじめ」「10歳で交響曲を」「12歳ではオペラを1本」
サリエーリ「やつはウィーンにいつまでいるつもりなんだ?」
風「いつまでも」「ここに住む気です」「下宿先はウェーバー夫人のところ」「淫らな女で」「娘が1ダース」「モーツァルトはその娘のアロイジア・ウェーバーに惚れていたが」「アロイジアはモーツァルトを袖にした」「そして今はその妹のコンスタンツェと婚約中」
サリエーリ「自分を振った女の妹と婚約したのか!…モーツァルトに会ってみたいな」
風「それならば」「モーツァルトは今夜ファン・スヴィーテン男爵の家の演奏会に」
サリエーリ「そうか、それでは私も行ってみよう」
演奏会へと向かうサリエーリ。
サリエーリ「そしてこの夜が、私の運命を大きく変えることとなる」
ファン・スヴィーテン男爵邸にて。
演奏会が行なわれるのとは別の間にて、菓子を食べるサリエーリ。背もたれの大きな椅子に座っているため体がすっぽりと隠れ、部屋に入ってきたものにはサリエーリの姿が見えない。
甲高い叫び声を上げながら、突如部屋へと入ってくる二人の男女。ネコとネズミの真似事をして、下品な冗談ばかりを口走る。
モーツァルト「ねぇ、トルァツーモってなーんだ?」
コンスタンツェ「え?」
モーツァルト「トルァツーモ!逆さまにしてごらんよ!」
コンスタンツェ「トルァツーモトルァツーモ…モーツァルト!」
モーツァルト「ピンポーン、キミは結婚したら、ェツンタスンコ・トルァツーモになるんだ~」
コンスタンツェ「イヤよそんなの!」
モーツァルト「ダァメだよ~!ボクは結婚したら、なんでもサカサマにしたいんだ!だから」(コンスタンツェの腰を掴み)
コンスタンツェ「キャッ」
モーツァルト「顔じゃなくて、お尻にキス♡」
コンスタンツェ「やぁだ、もう!」
ケラケラと笑うモーツァルト。ため息をつくコンスタンツェ。
コンスタンツェ「でもこの分じゃ、顔にもお尻にもどっちにもキスできないんじゃない」
モーツァルト「どうして?」
コンスタンツェ「アンタのパパ、結婚を許してくれそうもないじゃない」
モーツァルト「おやじの反対なんて、知るもんか」
コンスタンツェ「そんなこと言って、パパが怖いくせに」
モーツァルト「そんなことないもーん」横向きに寝っころがり、足を開いては閉じる仕草。
コンスタンツェ「結婚なんてできっこないわ」
モーツァルト、立ち上がり、跪く。
モーツァルト「結婚して」
コンスタンツェ「バカね」
モーツァルト「結婚して」
コンスタンツェ「本気なの?」
モーツァルト「本気さ。今すぐ返事して!(コンスタンツェの手を取り)ボク、結婚したら」
コンスタンツェ「うん」
モーツァルト「結婚したら」
コンスタンツェ「うんうん」
モーツァルト「そしたらボク、家に帰ってベッドの上でウンコしてうんやったー!って言ってやるんだ~!」
笑い転げるふたり。やがて召使が呼びに来る。
召使「奥様がお呼びです!」
モーツァルト「あ、そう」
立ち上がり、コンスタンツェの手を取る。
モーツァルト「行きましょうか、フロイライン・ウェーバー。音楽が待っています」
コンスタンツェ「ええ、行きましょう。トルァツーモさん!」
ゲラゲラと笑いながら立ち去るふたり。頭を抱えるサリエーリ。
やがて音楽が聞こえてくる。その響いてきた音楽のあまりの素晴らしさに打ち震えるサリエーリ。
その素晴らしすぎる音楽を聴くことに耐えられず、夜の街へと飛び出すサリエーリ。星空を見上げながら、神へと問いかける。
「なんなのですか、あの音楽は!まさか、まさかあれは、あなたがお求めの曲なのか!」
震えるサリエーリ。街にかすかに響く音楽に追い立てられるように、家へと戻る。
あの日から、あの音楽を忘れようと仕事に打ち込むサリエーリ。弟子を増やし、休むまもなく働き続ける。そして一方で、モーツァルトの楽譜を収集し続ける。しかしモーツァルトのほかの曲は、よくできているがありきたりでつまらないものだった。
そこで「あの曲はまぐれ当たりだったのかもしれない、どんな作曲家でもひとつは素晴らしい物を作ることがある」と安堵を覚えるサリエーリ。モーツァルトに会い、ウィーンへようこそと言ってやろうと思い立ち、モーツァルトが来るという宮廷へと向かう。
宮廷にて。集まっている皇帝、侍従長、伯爵、男爵らの面々
モーツァルト歓迎のための行進曲をつくって来たと皇帝に申し出るサリエーリ。皇帝の許可を受け、その曲を演奏する。
飛び跳ねながら、部屋へと入って来るモーツァルト。はしゃぎまわるが周囲の人々にたしなめられ、叱られた子供のように大人しくしてみせる。しかし曲を聴いているうちにステップを踏み出し、また怒られてしまい、しーっと口に手をあててみせるモーツァルト。曲が終わると大げさなまでに拍手をする。
皇帝陛下の手に挨拶のキスを何度もするモーツァルト。
「くすぐったい、そう興奮したもうな」と皇帝に言われる。
皇帝「久しぶりだな、モーツァルト。この者は昔この宮廷に演奏に来ているのだ。その話はもうしたかな?」
他の面々「いいえ、陛下!」
皇帝「あれは彼がほんの6歳のときのことだった。この宮廷の床ですってんころりんと転んでしまってな」
モーツァルト、けたたましい笑い声をあげるもはっと口をつぐむ。
皇帝「助け起こしてやった私の妹、マリー・アントワネットの頬にキスをしてこう言ったのだ。「ぼくのお嫁さんになって!」と」
モーツァルト、甲高い声で笑い出す。
皇帝「こらこら、そんなに照れるでない」
モーツァルト「えっ?」
驚くモーツァルト。
皇帝「皆とはもう顔見知りだな」
モーツァルト「もちろん!」
各人の前で大げさにお辞儀をするモーツァルト。
皇帝「サリエーリは知っているかね?」
サリエーリ「まだです、陛下」
皇帝「おお!ウィーンで音楽の道を志すものが、いやしくもサリエーリを知らないとは。手落ちだったな。紹介してやろう」
サリエーリを紹介されるモーツァルト。歓迎の曲を作ったのもサリエーリであると説明される。
侍従長「次々に楽想が湧き出て来るようで」
サリエーリ「いえいえ、ほんの思いつきでつくったものでございます」
皇帝「すばらしいぞサリエーリ」
モーツァルト「ありがとうシニョーレ!」
皇帝「ところで、オペラの話はどうなっている?」
モーツァルト「ああ、お話をいただけるなんてありがき光栄です。脚本ならもう見つけました、すっごく面白いんですよ!」
伯爵「何、脚本が決まっただと?聞いていないぞ!」
モーツァルト「はい、言うほどのことでもないかと思ったので…」
伯爵「ワシにとっては大事な話だ!誰の脚本だ!」
モーツァルト「シュテファニーです」
伯爵「それはいかん、アイツはダメだ!」
モーツァルト「でも面白いんですよ!」
皇帝「それで、どんな話なのだ?」
モーツァルト「それがですね、それがですね!…ちょっとばかり、エロ」
皇帝「エロ?」
侍従長「トルコのか!」
伯爵「それが国立劇場にふさわしい舞台だと思うのか!」
伯爵の方に否定、皇帝の方に肯定を繰り返すモーツァルト。
モーツァルト「ハイ!あ、いいえ。いや、ハイ!いいえ!いいえ!あ、ハイ!…どうしてですか?とってもおもしろいのに。女が裸になるわけでもない。ボクはね、このオペラでドイツ的美徳を描きたいんですよ」
サリエーリ「失礼だがドイツ的美徳とは?私は外国人なものでわからなくて」
皇帝「イヤミな男だな、サリエーリ。それで、どうなのだ?モーツァルト」
モーツァルト「愛ですよ。今までオペラで描かれたことのない、愛がテーマです」
サリエーリ「オペラはそもそもつねに愛がテーマでは?」
モーツァルト「ボクが言ってるのはもっと男らしい愛のことですよ、。男がソプラノのキーキー声を張り上げたり~(ビブラートきかせる)、バカな恋人たちが目をむいたり。あんなのは、イタリアのうそっぱちだ!」(この言葉を聞いて喜ぶ侍従長、睨みつける伯爵)
皇帝「完成を楽しみにしておるぞ」
男爵からも、フリーメーソンに誘うと声をかけられる。
残されたモーツァルトとサリエーリ。
サリエーリ「君のオペラの成功を祈っている」
モーツァルト「ありがとうございます!歌手はもう見つけたんですよ。カテリーナ・カヴァリエリっていう女の歌手です。あ、ほんとはドイツ人なんですけどね。箔をつけるためイタリア訛りにしてるんですって」
サリエーリ「ああ、知っているとも。私の愛弟子だ」
サリエーリ、モノローグ。
(私はカテリーナに手を出さなかった、しかし他の男が手を出すのは許せなかった、特に、この男は。)
モーツァルト「あなたってなんかいい人だな、僕のためにこんなかわいい曲まで作ってくれちゃって」ヒラヒラと楽譜を振ってみせる。
モーツァルト「覚えてるか弾いてみていい?」
サリエーリ「ああ、いいとも」
ピアノでサリエーリの作った行進曲を弾くモーツァルト。半ばまで弾き終わると「あとは同じだね?」と無邪気に問いかける。
弾き終わり、拍手をするサリエーリ。
サリエーリ「素晴らしい記憶力だ」
モーツァルト「ちょっと待って!…ここの三度のところうまくいってないね、(弾いてみる)四度にしてみよっ」
サリエーリの曲を改変して弾くモーツァルト。
モーツァルト「ああ…よくなった」
だんだんと演奏に興が乗ってゆき、大胆にアレンジしてゆくモーツァルト。一方でサリエーリの表情は曇ってゆく。
目が合い、わざとらしく笑い合う2人。
曲が終わり、そそくさと立ち去ろうとするサリエーリ。
モーツァルト「あなたも何か変奏曲をためしてみてよ!」
サリエーリ「申し訳ないが、皇帝に呼ばれていてね」
モーツァルト「ああ…。じゃ、さよなら、ありがとこれ!」
楽しそうに去ってゆくモーツァルト。
サリエーリ「このときだった、私が奴を初めて殺そうと思ったのは。芸術のこととなれば話は別だ。しかし、私は直接奴に危害を加えるようなことは何もしなかった。少なくとも、この時はこのときは」